奥能登の農耕儀礼ユネスコ無形文化遺産・世界農業遺産登録奥能登のあえのこと
2024年の遊行亭は日本に伝わる祭りと食文化というテーマで
この一年、プレミアム料理とお弁当を作ってきました。
最終回は石川県の奥能登に今でも残る『あえのこと』です。
とても奥ゆかしい、そしてどこか懐かしい。
現在残っている最古の儀礼形式を今でも残しているとも言われている
田の神様に一年の感謝を伝える農耕儀礼です。
12月5日、寒空の下、紋付袴姿で家長が鍬と若松の枝を持って田に行きます。
田の神様は基本的には地中の中に居ると言われています。
若松を田に植え、鍬で地面をコンコンとたたき神様を起こし
そして自宅にお迎えします。
一年の感謝をこめて神様にご馳走を振る舞い、入浴をしていただき、
しばらくの間、一緒に過ごします。
そして翌年、2月9日に元の田にお送りします。
それが大まかな一連の流れですと、
現在もこの儀礼を守り続けている川口さんにお聞きしました。
『あえのこと』は地域によってその呼び名が変わり、『あいのこと』や『よいのこと』、『田の様おくり』とも呼ばれています。
かつては能登半島の七尾の少し南の所までわりと広い範囲でとり行われていましたが、今では奥能登の一部の農家だけになってしまったそうです。
実は80 年代にはすでに「絶滅危惧」と地元の北国新聞で書かれていたのだとか。
「このような神事、儀式は全国各地に元々あって、自然発生的にそういうものができてきて、連絡も取り合っていないのにけっこう似た様な事をしているのは意外と多いですよ」とお聞きしました。
儀礼方法は実はとても多様性があります。
『お迎えはするけど帰りは自然に帰ってもらう』家もあれば
『家長が一緒にお布団にも入って一晩一緒に過ごす』という家もあります。
田の神様に奉る『俵の数やご馳走の内容』もとても様々。
基本形としては『迎えて』『口上を述べて』『御馳走を説明して』
『お風呂を汲んで』『御馳走はみんなで直会で食べる』。
翌年はその『逆を行い』『田にお送りする』のだとか。
昔からの形を今でも残しながら受け継がれてきています。
「田の神様は田んぼの中におられると言われています。
だから田んぼができなくなるとやらない行事なんです」と川口さん。
彼が神様を迎える千枚田は先の能登地震と豪雨の影響で激減。
『あえのこと』を行うのは「来年はむずかしいかもしれない」
と寂しそうに語ってくれました。
現在の千枚田。「まるで生クリームが落ちるような感じで落ちましたよ。ズズっと。」それが茶色い部分。
波打ち際の岩がごろごろしている所は隆起した部分
今年収穫した稲の稲架掛け(はさかけ)と田を見渡す料理長
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